群馬県 北群馬郡子持村 田中三郎さん
スポーツマンのように引き締まった身体で、どんなことにも一生懸命取り組む田中さんは、隠し事のない背筋がすっと伸びた生産者です。敏速な動きと姿勢のよさは、30年間、消防士をしていたことからもうかがえます。長い間、農業との兼業でしたが、6年前に定年を待たずに退職し、農業一本に絞りました。農業に全力を尽くし、第二の人生を楽しもうという思いから専業に切り換えました。40年間、農業をしているベテランの生産者です。
里芋を収穫作業。 |
切り株や茎、葉は、堆肥になります。 |
堆肥となる大切な植物や稲わら。 |
植木や植物の葉、茎、枝を粉砕して熟成させた堆肥。 |
農業を始めた頃は、農薬・化学肥料を使う慣行農法が当たり前の時代でした。それを、無農薬・無化学肥料栽培に切り替えたのは、35~36歳の時。田中さん自身が、農薬が原因かと思われるような症状があったことも起因し、それ以来、堆肥を使った安全で美味しい野菜の生産が、20年以上続いています。有機農業の草分け的存在で全国的に知られている、東京都世田谷区等々力の大平農園に出向き、そこでしっかり教えを受け、自分の農業に反映させています。
有機農法に切り替えて、一番大変だったのは、堆肥作りです。堆肥は全て、田中さんの手作りによるもので、田中さんの土地に育った杉、松、檜など、15~16種類の植木や植物の葉、茎、枝を粉砕して熟成させたものと、稲わら、米ぬか、おからなどで作ります。動物性の堆肥は一切使わず、無農薬の植物性堆肥を使用しています。こうすると、堆肥自体も木の香りがして、良い香りがし、悪臭が出ず、虫がつきにくくなります。
田中さんは、野菜を自分の子どもだと思って、生育状況を見ながら、情熱と真心をもって管理しています。野菜もその思いに応えてくれるとおっしゃいます。堆肥に手間をかけ、20年以上農薬、化学肥料を使っていない土は、ミミズなどの小動物や微生物がイキイキと活動し、ふかふかで豊かです。堆肥、土、生産者の熟練された技術、野菜作りへの愛情。全てがそろって栽培された野菜は、水っぽくなく、とても甘みがあり、それぞれの野菜のいい香りがし、味が濃く、驚くほど美味しい野菜になります。